注目の「家族信託」を活用すると何ができる?
家族信託は、将来、自分や親が認知症などで財産を管理できなくなるリスクに備えて、事前に信頼できる家族に財産管理を託す仕組みです。高齢化が進む中で、認知症になる人の数が増加しており、2025年には軽度認知障害を含む認知症患者数が1000万人を超えると予測されています。そのため、認知症リスクに備えて家族信託を活用することで、財産管理や相続のトラブルを防ぐ手段として注目されています。
家族信託の仕組み
家族信託では、委託者(財産を持つ人)が受託者(信頼できる家族)に財産の管理を任せます。委託者は通常、信託財産から利益を受け取る受益者でもあります。受託者は、委託者が認知症などで自分で管理できなくなっても、その財産を管理し続けることができ、必要に応じて生活費や介護費用に充てることが可能です。また、信託契約の内容は自由に設定できるため、不動産や金銭などさまざまな財産を含めることができます。
家族信託のメリット
家族信託には、いくつかの重要なメリットがあります。
- 資産凍結を防ぐ 認知症になると、銀行口座や不動産の管理ができなくなり、定期預金を引き出したり、不動産を売却したりすることが難しくなります。これを「資産凍結」と呼びます。しかし、家族信託を設定することで、委託者が認知症になっても、受託者がその財産を管理できるため、生活費や介護費用に必要な資金を確保できます。
- 複数世代にわたる財産管理が可能 家族信託では、複数の受益者を設定することができるため、例えば父親が亡くなった後、母親を第二受益者として財産を管理することも可能です。この仕組みにより、遺産が無計画に分割されるのを防ぎ、家族全体の生活を支える長期的な財産管理が実現します。
- 相続トラブルの回避 相続の際に不動産が兄弟姉妹間で共有されると、売却や処分が困難になり、トラブルが発生することがあります。しかし、家族信託を活用して特定の受託者に不動産の管理を任せることで、受益者全員の同意を得ずに処分できるようになり、将来的な相続争いを避けることができます。
家族信託を導入する際のポイント
家族信託は非常に有効な財産管理手段ですが、いくつかの注意点があります。
- 専門的な知識が必要 家族信託は自由度が高く、契約内容を柔軟に設計できますが、その反面、法律や税務に関する専門的な知識が必要です。信託契約の設計を誤ると、意図した結果が得られない可能性があるため、信託に精通した専門家と相談しながら進めることが大切です。
- 導入コストがかかる 家族信託の設計や契約には一定の費用がかかります。例えば、契約書の作成や不動産の登記、専門家への相談料などです。そのため、家族信託を検討する際は、コスト面も考慮し、長期的な視点で導入を検討する必要があります。
- 信託監督人の選任も検討 受託者が正しく財産を管理できるかを監視するために、「信託監督人」を置くこともできます。これにより、受託者が不正な行為をしないように監督し、信託の目的がしっかりと達成されるようにすることができます。
家族信託の検討が大切な理由
家族信託を検討することで、将来の財産管理や相続に関する問題を未然に防ぐだけでなく、家族間で財産について率直に話し合う機会にもなります。財産管理に関する計画を早めに立てることで、親や家族が安心して老後を過ごせるようになります。
まとめ
家族信託は、認知症などのリスクに備え、財産管理を信頼できる家族に託す有効な手段です。資産凍結のリスクを回避し、複数世代にわたる財産管理を可能にするなど、多くのメリットがあります。しかし、導入には専門的な知識やコストが必要なため、家族信託に詳しい専門家と一緒に慎重に計画を立てることが重要です。