【生前整理のすすめ②】 空き家問題と“実家じまい”
前回は「デジタル遺産」の整理についてお伝えしました。
今回は、とても重要な資産、「実家」について考えてみましょう。
「実家じまい」とは、親が住まなくなった家をどうするかを家族で話し合い、管理・処分・活用の方向性を決めることです。今では地域を問わず、空き家問題が深刻化しており、放置すれば税金や近隣トラブルの原因にもなりかねません。
なぜ今「実家じまい」が必要なのか
全国各地で空き家が増えており、場所を問わず目立つようになっています。

出典:総務省「住宅・土地統計調査(令和5年)」より作成
親族の死去や施設入居などで住まなくなった実家や相続することになった家屋を、空き家のまま放置すると、税金が大幅に増える可能性があります。 これは、住宅用地に対する固定資産税の「特例措置」が解除されるためです。 この図のように、通常は住宅が建っている土地に対して「住宅用地の特例」が適用され、税負担が軽減されます:
区分 | 固定資産税 | 都市計画税 |
小規模住宅用地(200㎡以下) | 評価額 × 1/6 | 評価額 × 1/3 |
一般住宅用地(200㎡超) | 評価額 × 1/3 | 評価額 × 2/3 |
しかし、空き家が「特定空家」または「管理不全空き家」と認定されると、この特例が解除され、最大で固定資産税が6倍、都市計画税が3倍になる可能性があります。
この制度は以下の法律に基づいています:
- 空家等対策の推進に関する特別措12置法(2015年施行)
- 地方税法 第349条の3の2 第1項
- 改正空き家対策法(2023年施行)
大分市の空き家バンク制度と補助金情報
大分市では、空き家の有効活用を促進するために「空き家バンク制度」を運用しています。
🏠空き家バンクとは?
- 市内の空き家を登録し、移住希望者や活用希望者に情報提供する制度。
- 登録は無料。売却・賃貸どちらも対象。
- 空き家所有者と利用希望者のマッチングを支援。
💰補助金制度(2025年9月時点)
- 【空き家改修補助金】最大100万円(対象:移住者向け改修工事)
- 【家財処分補助】最大20万円(対象:空き家バンク登録物件)
- 【耐震診断・改修補助】最大50万円(対象:昭和56年以前の建物)
※詳細は大分市公式サイト「空き家バンク」ページをご確認ください。
※大分市以外の県内の空き家バンク情報はNPO法人空き家サポートおおいたの関連ページhttps://akiya-oita.com/akiya-bank/をご参照ください。
実家じまいのステップ
- 資産の把握
不動産の名義、評価額、固定資産税の状況を確認。 - 親との話し合い
「住み続けるか」「売却するか」「子が継ぐか」など、本人の意思を尊重しながら方向性を決める。 - 名義の確認と登記準備
2024年から相続登記が義務化。放置すると過料(罰金)の対象に。 - 売却·賃貸の検討
空き家バンクや自治体の補助制度を活用することで、費用負担を軽減。 - 家財の整理と処分
家の中の物品整理は、前回の「情報の整理」と同様、家族の思い出と向き合う時間にも。
チェックリスト:実家じまいの準備
□ 実家の名義と評価額を確認した
□ 固定資産税の負担を試算した
□ 親の意思を確認した(住み続ける・手放す)
□ 相続登記の準備を始めた
□ 空き家バンク制度を調べた
□ 補助金制度の対象か確認した
□ 家財の整理計画を立てた
□ 家族で話し合う場を設けた
まとめ:家も「遺産」も、元気なうちに整理する
情報の整理が「見えない資産」の準備なら、実家じまいは「見える資産」の整理です。どちらも、家族の未来を守るために欠かせない生前整理の一環です。
「まだ早い」と思うかもしれません。でも、早く始めた人ほど、選択肢が広がり、心の余裕が生まれます。
まずは一歩踏み出してみませんか?
次回は「家財(モノ)の整理と思い出の残し方」についてお届けする予定です。